特別受益を不問にさせたが、特別受益を受けていた金額に誤りがあり、譲歩を余儀なくされた事例
依頼者
40代 男性
相手方
兄弟 6人
遺産
預貯金1100万円
依頼の経緯
依頼者は長い間父の介護をしており、入院費や治療費などは父の預金を充てていた。最終的に残ったお金を兄弟で分けて解決をしたいと依頼があった。
事情
依頼者が父の入院費用などの領収書を保存しておられ、残っていた遺産からそれらを引いて、最終的に残った金額を割りだした。最終的に父の預貯金は1100万円ほど残っていました。
依頼者は生前に2000万円の贈与を受けており、自身のお店の開業資金として600万円を使い、他は父の治療費・入院費・葬儀費などに充てました。
「600万円以外は父のために使っているので、特別受益としては算定せずに、残った1100万円だけを兄弟に配分したい。」と全相続人に伝え、協力を求めました。
6人の兄弟のうち、5人からは同意を得られたが、長女のみ了承が得られなかった。長女は、生前贈与の2000万円のうちの1400万円を本当に父のために使っていたのか疑問に思っていました。
長女は頑なに自分で確認したいと言うので、依頼者が保管をしていたレシートなどの原本をすべて渡しコピーを取らせたところ、1400万円は父のために使用したということを理解してもらえました。これにより、解決に向かうはずでした。
ところが、依頼者が2000万円以外とは別に400万円ほど受け取っていると長女は主張した。調べたところ、別の口座から依頼者に400万円が入っていたことがわかりました。
改めて預貯金が見つかったので、相続人全員に生前贈与は2400万円だった旨再度通知をし、長女以外の方からは1100万円を法定相続どおり分配することで同意を得ることができました。しかし、長女からの同意は得ることができませんでした。
調停等に移行すると、長女から「開業資金600万円と日に判明した400万円は特別受益だ。」と主張され、依頼者の取得分が0となる可能性がありました。依頼者と協議したが、依頼者が早期に解決を望んでおられたので、自分の主張を抑え、協議で解決をすることにしました。他の相続人には1100万円を法定相続分通りに相続をしてもらい、一人あたり160万円程度の金額を渡し、依頼者は160万円のうち、100万円を長女に渡す形で(依頼者60万円、長女:260万円)を取得することで解決しました。
入院費や生活費の原本を残していたことが、2400万円を特別受益として認められずに済んだ要因となりました。